コミックレビュー

辛いのに読む手が止まらない「凪のお暇3巻」の心理描写が逸材すぎる!

 お暇を取ったのに変われない!心が抉られまくる3巻です

空気を読み過ぎて自分を見失ってしまった女性・大島凪が「なりたい自分になって再スタートしたい」と意気込み、社会から一時的にドロップアウト(お暇)をしながら、自分と向き合うコミック、凪のお暇。

1巻から楽しく読ませて貰っておりますが、3巻からは1~2巻でハラハラ(モヤモヤ)していたことや、凪・慎二の過去が判明し、物語が一気に進む内容となっています。

  • 何故、凪と慎二がそれぞれ『空気を読む』ことに徹してしまったのか?
    (二人の家庭事情が判明します)
  • 凪とゴンの恋愛事情は?
    (二人の関係が進むことによって、凪はなりたい自分になれるのか?)
  • ゴンは一体どんな人間なのか?
    (凪を利用しようとしているのか、人格者なのか?)

 

今回は恋愛回にスポットがあたっていますが、キャラクターの恋愛観よりも、心理描写が丁寧に描かれていますので、ラブコメ物が苦手な方でも楽しめる1冊となっています。

以下では凪のお暇3巻を読んで面白かった部分をピックアップ。
ネタバレをしているので未読の方はご注意くださいませ。

 

↓1巻・2巻のレビュー記事はこちら↓



凪のお暇3巻、ここが面白い!

凪と慎二が抱える心の闇が深すぎる

3巻の前半では、凪と慎二の家庭事情が垣間見えるシーンが数多く見受けられます。

凪の親は『周囲を味方につけて、自らが望む回答をさせるように仕向けてくるタイプ』
(何を言っても凪が悪いように洗脳してくる)
慎二の親は『家族間が破綻しているのに、周囲には理想の家族のように演じる二面性を帯びたタイプ』
(父親は浮気三昧で母親は子供に興味がない上、整形依存。長男は嫌気のあまりに蒸発)

双方、かなりの毒っぷりを醸し出しており、凪と慎二が社会で働ける人格に育った(凪は相当無理をしていましたが)のが奇跡じゃないか!?と感じたレベル。
字では表しきれない酷さなので「凪のマイナス思考がうざい」「慎二のモラハラ体質クソすぎる」と二人に対してマイナスな感情がある方は見ると印象が変わるのではないでしょうか?

余談ですが、『父親は家族を捨てて出て行ってしまった』的な話を凪がゴンへしているシーン。
もしかすると凪の父親は、凪の母親のアレっぷりに病んでしまったのでは……と勝手に予想中です。

ゴンの天然メンヘラ製造機っぷりがやばい

今まで変わろうと必死になる凪をさり気なくフォローしてくれていた優しい隣人・ゴンの本性が3巻では明らかに。

彼は決して悪人ではない。
ただ、『目の前にいる人に誠実(目の前にいない人には不誠実)な性格』かつ『誰にでも平等な性格』な人間……
所謂、天然ジゴロな男でした。

その場にいる相手には、もっとも喜ぶことをしてくれるけれど、その後は約束も破るし、基本的にマイペース。
ゴンに振り回されていく内にゴンへ好意を寄せる女の子は自然とメンヘラになってしまうという、依存したらあらゆる意味で積むタイプのようです。

途中、ゴンの元カノから、釘を刺される凪でしたが、それでもゴンへ想いを募らせてしまう展開に。
凪が幼少期から味わっていたコンプレックスを加味すると、ゴンの(その場限りの)誠実さに惹かれてしまい、「本命じゃなくてもいいや、彼が好きな人たちでシェアするべき」という考えに至ってしまうのも分かるなと思いつつも、もどかしい気分になってしまいます。
(凪が母親のことを嫌いといえない部分をフォローするゴンの手腕は神レベルでしたからね)

凪が少しずつ堕ちて行く様が見てて辛い

今回は凪が勇気を出し、ゴンへ告白。
その勢いでゴンと凪は一線を超えた関係になるのですが、上の項目に書いた通り、ゴンは天然のメンヘラ製造機。
彼の雰囲気に浸かりたいと望んだ凪は、生活の主軸を『自分が変わるため』から『ゴンに会って愛して貰う』ことに変えてしまいました。

その変わり方は一瞬でなく、コミック内でジワリ、ジワリと変動していくので、ちょっとしたホラー系を見ている気分に。

3巻ラストで、ゴンへの好意で堕ち切ってしまった凪を見た慎二が驚愕するシーンは、今までの凪を知っている読者側も「え!?」となってしまうほど。
次回、慎二が凪に対しどう接するのか、凪が慎二の言葉を受け入れられるのか?が非常に楽しみな幕引きとなっています。

 

全体の感想 

心が抉られる1冊でした。

凪と慎二の親は猛毒すぎて好き嫌い以前に恐怖を感じましたが、ゴンに関しては嫌いになれず、むしろ「ああ、そういう人種だったのね」という納得感があり、より好きになりました。
(ゴンのようなレアキャラって稀にいますよね……やらかしても絶対に悪役にされないやつ)

むしろ、あの天然ジゴロが原因で当人が意図していないトラブルに巻き込まれまくってそうな気がするんですが、どうなんですかね…

そして、凪の心情的にゴンへ依存してしまうのも分かる。
あんなにピンポイントで凪の闇を取りはらってくれたり、優しくしてくれたら惚れてしまいますわ。
……けどお前、慎二が言う通りすべってるよ!!!というもどかしさが絶妙で最高です。

話の展開的に凪の母親が東京へやってくるのも時間の問題となっているようなので、できれば慎二がその場にいて彼女を救ってやって欲しいと願わずにはいられません。
(凪と慎二が寄りを戻すか否かとは別にね。毒親がいる人の気持ちは毒親がいる人じゃないと理解し切れないと思うので的な意味で)

凪の母親といえば、「普通」にこだわる執念や何かと娘を悪役にするヤバさが凄まじかったですが、彼女の親(凪視線だと祖父母)にも問題あったのではないかと予想中です。
あと、出て行ったらしい旦那(凪の父親)関連もいつか描写して欲しい…

 

 

凪のお暇は3巻も電子書籍版がお得

凪のお暇シリーズは電子書籍で購入すると、1冊につき約150~200円ほど安く購入が可能です。
人気コミック故、時期を逃すと紙媒体が割高になっている時があるので電子書籍環境がある方は電子書籍版がお得です。

 

[n_news]