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【小説】湊かなえ先生のユートピアは「つまらない」のではなく「惜しい」作品だと主張したい!

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主張が違う人間同士の善意は悪意よりも質の悪い物になる話

突然ですが、湊かなえ先生の小説が大好き人間です。
(読んだ後にモヤモヤが生じるミステリー「イヤミス」の女王と言われている方です)

周囲では『告白』(娘を失った教師が犯人である生徒二人を精神的に追い詰めるという衝撃さ&後味がとてつもなく悪い内容)を機に有名になった方でした。

私自身は本屋で偶然見かけて購入した『贖罪』(変質者に殺された女児の母親が幼さなどが原因で警察への証言が曖昧になってしまった娘の友人たちに呪いの言葉を吐き、感受性豊かな彼女たちが、そのことがきかっけで歪んでしまう内容)の終始、苦みを生じる描写に惹かれ、ファンになりました。

湊先生は多数の小説を世に出し、いくつが実写化しているのですが
その中で2018年に発行された『ユートピア』という作品のレビューは比較的、低飛行気味。
googleのサジェストでも「つまらない」と出てしまうらしく…

違う…違うんだ!あの作品は決してつまらなくない!!!!
一部、不明瞭な部分が惜しいだけなんだ!!!!!
(湊先生のことだから、あえてぼかした説もプッシュしたい

 

今回はそんな気持ちを書きつづりたく記事をアップしました。

『ユートピアってどんな話だっけ?』以降は
息を吐くようにネタバレをしているので、これから読む方はご注意くださいませ。

 


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ユートピアってどんな話だっけ? 

舞台は、美しい景観で有名な田舎町『鼻崎町』

メインキャラクターは

  • 堂場 奈々子(どうば ななこ)
    事故で車いす生活を余儀なくさせられている久美香を娘に持つ。
    (浮気経験のある夫は、久美香の一件で改心した)
    失踪した義母のためにと夫に言われ、義両親が経営していた仏具店を引き継ぎ、娘の面倒をみているため、実質、自由が無い日々を送る。
  • 相場光稀(あいば みつき)
    夫の転勤で鼻崎町に住むことになり、都会的なオーラを出している美人。
    娘の彩也子を溺愛する反面、浮気疑惑のある夫とは冷めた状態。プライドが高い。
  • 星川すみれ(ほしかわ すみれ)
    一度は陶芸家としての道を諦め、会社に勤めて生計をたてていたが、元カレの健吾に鼻崎町へ招待されたのを機に再び陶芸活動を始めた女性。
    次々に作品を作り上げては、制作品のネットで販売をするなど、意欲的。
    意識の高さ故か、近所の同業者を見下している。

元々、交流があったわけではない三人の女性たちは、
町内のお祭りでの火災、そして火事に巻き込まれた歩けない久美香を光稀の娘・彩也子が助けたのを機に運命が絡み合います。

火災での一件後。
殆ど頼りにならなかったり救助すらしなかった人間たちが表彰される中、彩也子が書いた『久美香との友情を綴った作文』が話題を呼ぶことに。
それに目を付けた、すみれは、彩也子の作文と彩也子&久美香の写真を自分が管理してるウェブサイト(陶芸品の販売サイト)に載せたいと提案。
娘の写真をネット上に晒す流れに渋る光稀と奈々子でしたが、最終的にはOKを出してしまいます。

すると、彩也子&久美香はたちまち有名人に。
(光稀が雑誌方面にコネがあるので、そちらも大きく影響した模様)
すみれのサイトはアクセス数が異様に増え、奈々子・彩也子・すみれは取材を受ける日々。

その中で、三人は、久美香のような車いす生活をしている人を支援する『クララの翼(元ネタはアルプスの少女ハイジ)』を設立することになります。

設立後、話題は絶えることなく、クララの翼オリジナル製品は好調な売れ行きを叩きだします。

すみれは、彩也子&久美香を使って自分の商品をもっと売りたいと企み、
奈々子は、今のままで良いのかと不安を募らせる最中、すみれのパートナー・健吾からやたらアプローチをされ、
光稀はキラキラした生活に目を輝かせるものの、娘よりも久美香が注目されることに苛出しを感じ出します。

最初こそ、善意で『クララの翼』を設立した三人でしたが、主張が違うため、段々と綻びが生じることに…

更に、彩也子と久美香は、インターネット上のおもちゃにされてしまいます。
彩也子は火事の際に出来た傷をネタにされ、久美香は実は歩ける説を指摘され…
久美香に至っては学校内で虐めを受けるまでになってしまいました。
(好奇心で久美香をつけまわす心無い生徒のせいで、久美香はトイレに行けなくなり病気になってしまいます)

また、クララの翼で得た金銭は寄付をする流れだったにも関わらず、すみれが寄付を行っていなかった件が発覚し自体は深刻化。

 

その一方で町内では、過去に殺人事件を起こした芝田が鼻崎町に戻ってきたという不穏な噂が流れ、ついには彩也子と久美香が誘拐されてしまう大事件が起こってしまい……

 

 

善意ではじめたはずの活動が急変、幼い子供二人の境遇がどんどんと悪化していく姿。
そして、彼女たちを白い目、好奇な目で見る周囲の人間たち。
面白半分で車いすで苦労している女の子をおもちゃにする無関係者。
運悪く発生してしまう元殺人犯が起こしたらしき誘拐事件の勃発。

読者側のヘイトが溜まる一方、ラストでは、とある人物の独白により、驚きの事実が判明しての締めとなっています。

 


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個人的に推したい、某キャラクターの歪んだ心情

自意識が高くスカッとする系漫画なら絶対に落ちぶれるであろう光稀、目先の利益を優先&子供を使って作品を売りたいのが見え見えなすみれに比べると、常識人のように見える奈々子。

しかし、彼女の中には
『愛しているはずの娘すら枷と思っている一面』が垣間見えています。

 

奈々子の本作に至るまでの経緯は
義母は駆落ちで行方不明。
それにより、認知症の義父の面倒を押しつけられ(しかも、義父は最期まで奈々子を娘だと思っていなかった)
いつか帰ってくるかもしれない義母のためと、義理の両親が経営していた仏具店の切り盛りを旦那から押し付けられ、当の旦那は久美子が事故に遭うまでは、浮気をしていた

そして、周囲は奈々子と久美子の不幸を悪口の種にして会話を弾ませている
(久美子の事件に居合わせたママ友は、奈々子たちが賠償金貰ってずるい!と言う始末)
……という不幸の塊状態。

 

そんな中で、唯一の光である久美子を愛する描写が明確に書かれており、黒い部分はあるものの、健気な印象のある女性なのですが、終盤で久美子が歩けるようになった(元々歩けていたが、奈々子はそれを知らない)後に本性が露呈。

「この現状を幸せだと、いつまで思わなければならないだろうか」
「久美香が歩けることだけを幸せに思い、年老いていくのだろうか?」

と本音を心中で語ります。

しかも、その後に

「健吾がふと目の前に現れて金と一緒に自分を連れ出してくれたらいいのに」
(奈々子は一時的にすみれの彼氏・健吾からアプローチをされてた←奈々子の義母が健吾の犯罪の目撃人のため探りを入れていたというオチなのですが、奈々子はそれも把握してると思われる)
と妄想して楽しくなるという描写も。

もし、健吾が来なくても奈々子は義母が残した財産を一部、盗み持っているので、いずれ、ふと姿を消してしまいそうな気もするような締めがなんともいえぬ味を醸し出しています。

 

かなり歪んでいる奈々子ですが、
そもそも旦那の修一が常識人に見えて実はヘタレで責任感が無く
周囲にアレな人物が多く、閉鎖空間にいて味方がいなかったからこそ、こうなってしまったように感じられました。
味方は久美子がいたはずなのに、気づいていないと言う皮肉……)

奈々子が背徳的な思考を重ねている描写を見ると、
娘の久美子が『両親が仲良くいて欲しいからずっと歩けないフリをしていた』のを言ってやりたくなるのが憎いところです。
(久美子は学校で虐めにあっても、歩けないフリを貫き通したくらい、両親を想っていたので)

余談ですが、不倫漫画をいくつか手がけている黒澤R先生が本作品をコミカライズをしたら、健吾の描写が増え、最終的に奈々子は健吾と駆落ちするんだろうなと勝手に妄想しておりました。
金魚妻シリーズにあってもおかしくない。

 

 

本作を読むと嫌でも分かるクソ女のすみれ&実は色々と黒い奈々子を眺めていると、私の娘をもっと注目して!!!!なヒステリー系であった光稀が三人の中では一番まともだったのかな?と思わずにはいられません。

彼女の自己主張が強いシーンは中々、乾いた笑いがでましたが、町内で仲間と一緒に販売していたプリザーブドフラワーの腕は確かにあり、一緒に経営している子たちからは慕われてたし、娘への愛情はしっかり見受けられたし、浮気を疑ってた旦那が実は…な真相知った際、素直に反省していたので。

 

惜しい部分とは?

全てのレビューを見られていないため、見当違いだったら申し訳ないのですが、
本作品が残念枠に入れられがちなのは、ある重要人物の独白(本音)が無いところなのでは?と勝手に思っています。

 

序盤から登場しないにも関わらず存在感を色濃く漂わせている殺人犯・芝田
すみれのパートナーであり、黒幕。そして、芝田の元共犯者である宮原健吾
そして、第三者の独白で『実は歩けた』という読者に衝撃を与えてくれた奈々子の娘・久美香

少なくとも重要人物である三人の独白がないことによって(芝田は健吾に殺されてるので描写のしようがないかもですが)不明瞭になり疑問点が残りながらの読了になってしまったのではないでしょうか?

久美香については、彼女の本音を隠すことで、良い意味で考察ができる(両親のことを本当はどう思っているのか、彩也子との友情は本物だったのか?など)ので、私はあえてぼかしたのだと感じています。
なんとなく、湊先生作品らしいなあ的な良いもやもや感。

健吾は、相当やらかしているので、いい人そうに見えて…な部分はぜひ湊先生節を見せて欲しかったです。
少なくとも、サイドストーリー的な位置で健吾の独白や、鼻崎町へ来るまでの話があれば、ミステリー要素の追加も兼ねて、解消されたのかもしれません。
彼の描写をすることで、芝田や健吾&芝田が殺した人物の掘り下げもできただろうし。
(私自身も、健吾サイドの話はおまけ的な位置でいいので掲載して欲しかった派)

 

モモコ(管理人)

ユートピアは、個人的にはかなり大好きな作品なので、熱い語り記事をアップしてみました。

クララの翼設立時、ああ、これ段々と悪化するやつやん…から一気に惹きこまれ読了した作品です。
よりによって被害を受けたのが悪いこと何にもしてない子供二人なのが胸糞オブ胸糞。

個人的に、久美香側の独白がないことで、久美香と彩也子は本当に友人だったのか?も謎になってしまうのが地味に怖かったなと。
(彩也子が同級生とあまり絡む描写がなかったので、実は一方的に久美香に構っている可能性も?)
ただ、久美香が親に言えないレベルの秘密を彩也子だけに伝えたこと。
彩也子が秘密を守り続け、久美香を支えた部分を見ると、二人の間には純粋な友情があったと感じたい派ですね。

すみれは三人の中でダントツのクソ女だと思うのですが、彼女のアーティスト故の苦悩(ライバルの顔や名前を見るだけで劣等感に悩まされるなど)は、一部、共感できるなと感じましたが性格がもう……アレ。
ラスト、さっさと逃げちゃうのも彼女らしいなと。
お前、そういうところやぞ!!!!!
おかげで、お前が散々ディスってた、るり子がいい奴に見えて終わったぞ!!!
(一番悪いのは健吾なんですがね)

今回ピックアップした作品はこちら

紙媒体のみでの販売となっています。

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