コミックレビュー

角川とバトルした佐倉色先生の「とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話」が下手なホラーより恐ろしかった件

実話であって欲しくないレベルの結末!漫画好きには衝撃過ぎる現実かも

色紙を無償で1600枚描かされた挙句、超有名企業・角川(KADOKAWA)に無責任な対応をされた漫画家・佐倉色先生はご存じでしょうか?

私自身、Twitterで佐倉先生の件を軽く知っただけですが、佐倉先生の呟きをRT経由(Twitterの機能です)にて拝見した当時、「漫画業界ってブラックなんだな…」「大手の業界でもこんなことするんだ」と感じずにはいられませんでした。

色紙1枚ですら長時間かかる自分からしたら1600って数字が頭を巨大ハンマーで殴られた気分だったのを今でも覚えています。

その佐倉先生が、角川とのバトルを顛末含めて描き綴ったノンフィクションコミック「とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話」を今回、読了し、更に漫画業界への恐怖が増したこの頃です。

既にネットの情報で知っていても、ゾクゾクしたのは真実が(改めて見ても)凄まじかったことと、佐倉先生の表現力があったからこそかと。

 

以下では、読んだ感想を微ネタバレを混ぜつつ語っております。
※あくまで本の感想についてを書いており、角川を叩く内容では一切ありませんのであしからず。



「とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話」の読み所はここ!

佐倉先生が魂を削りながら描いてるのが伝わる臨場感に心が抉られる

ストーリーは、角川で連載を始めた佐倉先生が

無責任な担当者に振り回され
途方もない数の色紙を無償で描かされ
心が折れてTwitterに角川の件を書きこむまで
がメインとなっています。

とにかく終盤付近まではこちらの胃がキリキリしてしまうほどの内容。

角川がうんぬん…というより、佐倉先生の元担当者がいかにヤバかったかがページをめくる度に味わえます。
(佐倉先生のイラストが可愛いので、よりホラーに感じることも しばしば)

そんな描写を何ページも描いている本作品は、まさに佐倉先生が魂を削りながら描いたといって過言でない1冊です。

可愛いイラストで「過去を掘り下げるのが辛いけど今の担当さんや周囲の方たちに助力して貰ったからこそ描けた」と描かれているのですが、あそこまでされて描き切った佐倉先生の「漫画を描きたい」というメッセージ性は漫画描きでない私にも胸に強く浸透しました。

 

相手へ対する『尊重』について考えさせられる

佐倉先生の元担当は、パワハラをする人物ではないものの、相手の精神を無自覚に攻撃してくる天然の地雷人間に見受けられました。

悪意がないのが本当ホラー…深く関わったら一方的に心が摩耗するタイプ。

バイトもしくは社会経験がある方は、元担当者の行動をいくつか見た時点で寒気がすると思います。
(コミカルに描かれていたので、殺伐さはかなり削減されていましたがそれでもエグイ)

途中で佐倉先生が元担当者を「他人の時間や財産・労力・職務を軽んじている人」と評していたページを見た際、相手に経緯・尊重がない人と仕事をする虚しさってこういうことなんだろうな、と感じました。

逆に、佐倉先生の祖父、友人、新しい担当者さん、佐倉先生に対して謝罪のファンレターを送ったファンの方の行動を見て、どんな形であれ『相手への尊重』がなければ、何かをする・何かを紡ぐのってできないんだという気持ちが心に重く沈んだ気持ちになりました。

誰かと関係を繋ぐために必要な物って何だろう?と思っている方にも非常に刺さる奥深さは漫画業界に興味無くても読んでいただきたいです。



角川怖い、まじ怖い…な後味感

読み終えた後は、角川もとい漫画業界で生き抜く大変さを誰もが感じるかと思います。

一般業者もそうですが、上司・仕事のパートナーは選べないことが殆どですし「仕事だから」とある程度受け入れないと働いていけないですからね……

私はコミックを一通り読み終えた後、以下の月刊少年エースの呟き(Twitter経由の発信記事)をギャグとして見れなくなりました。

佐倉先生ごめんなさいって……ガクブル。

この漫画を佐倉先生がどんな気持ちで描いたのか考えると、気が滅入りますね。

【まとめ】漫画界のリアルな闇を見てしまった気がする

ホラーの王道に『本当に怖いのは人間』的なオチがありますが、まさにソレな内容です。
角川だけでなく、ねとらぼ関連の描写もあり、こちらについてもかなり考えさせられました。

読み終えたころには角川怖すぎて印象が変わってしまいます。
長年、お世話になってるチョロいオタクの自分ですら寒気がしました。

しかし、佐倉先生が「もう角川の作品は買わない」=「作品が売れなくなって被害を受けるのは漫画家」と語っていたところにハッとさせられました。

漫画家を応援したいなら、今まで通り(会社問わず)買い続けるのが読み手としてのアクションなんだなと。
好きな漫画はこれからも積極的に買って(発売日直後)応援していきたいです。

角川関連に対し、かなり踏み込んだ内容ですが、終始、客観的な内容多め・どうしてTwitterに本音を暴露したのかな経緯を丁寧に書いているため、漫画業界に関するエッセイとしてはかなり高レベルな物と感じた読了でした。

また、(上記と被りますごめんなさい)漫画関連だけでなく、相手を損尊重する大切さや思いつめた人間の心理状況、好きなことを続けていくための活力などなど、学べることが多々あるのも個人的に収穫でした。

某レビューサイトで言われていた「怖いで終わらせてはいけない内容」だと心底感じます。