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【漫画感想】友達100人切れるかな|苦しみながら続ける友情を否定する心の解毒漫画


友達は多い方が正義! とにかく、いっぱい作りましょう!」
友達がいない人っておかしいよね。むしろ負け組
「友情は尊い感情! 絶対に否定してはいけない」

そんな言葉の呪いに苦しめられている人は、年齢・性別関係無く、今現在でも多くいるのではないでしょうか?
恥ずかしながら、過去の自分もそうだったり……
(友達が少ない=恥ずかしい と勘違いしていた時期がありました)

今回、ご紹介するのは、そんな苦しみをスッパリと切ってくれる漫画。

自分が苦しむ友情は不要です!がテーマな友情関係デトックスコミック『友達100人切れるかな』です。
(高確率で『友達100人できるかな』のパロディ)

友人関係にお悩みな方、友人の有無・数に対して思うところがある方、人の心理状態についてもっと知りたい方には、とても見所がある一冊。

以下では、個人的な感想をまとめております。
各ストーリーの内容など、若干、ネタバレをしているのでご注意くださいませ。



友達100人切れるかな1巻 少しネタバレありなご紹介

本作は、人間関係研究家・有馬亜土が主人公となり、依頼者の友人関係に対する悩みを聞き、心理学に基づいた解決方法を伝えるストーリーとなっています。

「人はなぜ、人間関係を悩みながら続けるのか?」

様々な心理学を学んだものの、友情が絡む心理は奥が深く、たくさんのサンプルが欲しい。
そんな想いから、1回500円(追加料金無し)という破格金額で、相談に乗ってくれる優しいような怪しい有馬先生。彼の本意とは一体……!?

 

本ページでご紹介する、1巻では、4つのストーリーが2部構成(全8話)で収録されています。

収録されているエピソード

マウンティング女子を切る方法

 

友達なのに、いつもあなたに嫌なことを言ってくる人はいますか?

 

何かと自分を見下してくる友人・瑠美との関係に悩んでる、浜野わたげが相談者。

大学時代から良いように使われたり、肌の色をさりげなく笑われていた浜野でしたが、卒業後の友人同士の飲み会では、仕事内容を馬鹿にされていました。

どんな話題に対してもマウントを取られ、共通の友人たちの前で公開処刑状態にされる。
なのに、飲み会がある毎に絶対に誘ってくる日々に疲れ、かなりの疲労状態に。

「友達は多い方が良い、大切にすべきだ」と主張し、相手との友情を切りたがらない浜野に対して、有馬が提示した課題は『仕事の嬉しい報告をする』

 


 

【感想】

「そんな友人は切りましょう」と有馬に言われた際の浜野の反論がまさに『友達はたくさんいる方が正義、友情は大切な感情!』でゾワっとしました。
(浜野自体が心身共に相当、やつれている描写も併せて)

最高のファーストパンチです。

浜野は有馬の課題である『仕事での成果』を飲み会で話してみるものの、瑠美の反応を見て、何故、自分にマウントを取られていたかを知ってしまいます。

そして、真実を知った浜野に対する有馬の洋服に例えたアドバイスは、かなり見所。
確かに友人関係は洋服と一緒で新しい出会いもあるし、選ぶのは自分なんだなと改めて感じました。

瑠美は元々、浜野を下に見ていたような描写があったので、例の一件で『こき下ろして安心する絶好の対象』になってしまったんだなと思うと、友情って何だろうと思ってしまったり。

 

群れたがり女子を切る方法

 

あなたの友達に、いつも群れたがる人はいますか?

 

相談者は、『皆で仲良くしよう♪』がモットーのムードメーカーな友人・日菜との関係に悩む藤田つかさ。

高校からの親友である日菜は、学生時代から友人関係が広く、「私の友人は貴方の友人!皆でワイワイしよう」という性格。

そのため、一緒に会うと知らない人(日菜の友人や同僚)を連れてきてしまいます。
会う度に気疲れしてしまう藤田。

「皆で仲良くするのが正しい」という概念があるため、日菜に強く指摘をできない藤田に対して有馬は『他の人を勝手に呼ぶのを止めて欲しい(相手は好意でやってるけど、自分は嫌だ)と言ってみる』とう課題を出し…

 


【感想】

いるいるいる!浅く広く友人が沢山いて、それを押し付けてくる(自分が仲良くできるから貴方も仲良くしようね!ダメだったら、お前が暗いせいだから!そういうの駄目だよ!の説教コース)タイプーーー!!!!

…と、暗黒時代の一部を思い出す内容でした。

「友達は多い方が良い」と感じていた藤田は、有馬の課題を通して、「(今までたくさんの日菜の友人と関わったけど)結局、何も残らなかった」ことと、フレンドリーに見えた日菜が自分の苦しみを分かろうともせず、心は全く繋がっていなかった現実に気づく描写からの

「(私の友達と会うことから)逃げちゃだめだよ~>< by日菜」

に笑いました。
こ、怖い……藤田も言ってましたが、話が通じな過ぎてホラーだ。
学生時代に藤田が日菜に指摘したら絶対虐められてただろうな…ある意味、社会人になって気づいて良かったのかも?

こういう子って学生時代にいると、批判した方が悪くなるんですよね。
クラスでは人気でるから。ある意味、無自覚な害悪。



 

SNS依存女子を切る方法

 

あなたには、SNS中毒になってしまっている友達はいますか?

 

相談者は「友人がSNSが原因で変わってしまった!」と嘆く女性・藤原柚季。

大学時代からの友人・香奈子は映画情報に長けていたためか、SNS(Twitter)をはじめると、バズる呟きをいくつも出し、ちょっとした有名人になっていました。

そのためなのか、柚季がSNSでリプライ(話しかける)と無視するのに、有名人には返信しする。急に攻撃的な呟きをしては消すを繰り返す。
映画に誘ってもSNSばかり見ている…など、香ばしくなってしまった模様。

現実よりもSNSでの承認欲求を優先している香奈子は褒められたものではないが、『加奈子が間違っている』と主張する柚季の正義感に嫌悪を示す有馬。

「相手が間違っている・いないは、あなたの常識です。人を思い通りに動かそうなんて、おこがましいことですよ」

香奈子のSNSは見ず、リアルな付き合いをするよう課題を出す有馬。
しかし、柚季はどうしても納得ができず、アドバイスを破ってしまいます。


【感想】

Twitterでおかしくなった人間をリアル友人含めて多数見た経験があるので、加奈子が段々アレになっていくのに「うわあ…」となりつつも、柚季の(自身の)正義押し付けたいマンっぷりにも「うわあ…」となる内容でした。

柚季は友達想いなんだろうけど、距離感がちょっとおかしい部分があったのかなという印象でした。
彼女自身、加奈子の悩みに対して真剣だったりと、根は凄く良い子なだけに辛い…
(友情にこだわり過ぎた故のアレ)

あと、ラストの柚季がした行動は、簡単にできそうでできない類だと思うので、とても尊敬しました。

解説にもありましたが、SNSが生きがいな人は、あえて距離を取るのがベストですよね。
だって、指摘しようが絶対に直さないし、SNSフレンドによしよしされる材料にされるし。

 

自分が持っていないものを持っている友達

 

あなたには、自分が手に入れられないものを持っている友達はいますか?

 

相談者は、自分が欲しい物を持っていることを、ナチュラルに話しまくる友人・乃梨にイラつきを生じている女性・佐々木壱花。

壱花は結婚後に不妊が発覚し、周囲に嫌味を言われながら治療をしていました。
しかし、乃梨は会う度に子供の話ばかりし、子供ができないと相談すると「授かりものだからね」と軽く言うだけ。

持っている側には、持っていない側の気持ちなんか分からないんだ。

長年付き合って来た友人に負の感情を抱き、苦しむ壱花に有馬が提示した課題は『自分を苦しめている呪いを解く』

有馬曰く、壱花は自分で自分の常識(子供ができないのは不幸)を押し付け、心を重くしていました。
人は望む物が手に入らなくても幸せになれるし、夢を追いかけるのが辛いなら休んでも良い。

自身の感覚を変えるため、乃梨と距離を置くことを決意した壱花。

一方の乃梨は、壱花に避けられたことで違和感を生じ、己がしていたことに気づいてしまい…


【感想】

他のエピソードと違い、相談者と友人(壱花と乃梨)が関係を修復できた結末に驚きながらも後味の良さにほっこりしました。

壱花が有馬のアドバイスをしっかり受け入れたのに加え、自身の心をしっかり変えられたのも大きかったですが、乃梨は乃梨で、嫌味とかじゃなくて環境故にあの態度だった→それを乃梨自身が気づいたのが大きかったのかなと。

大人になると確かに暗い話題ってしずらいですよね。
誰にでも言える内容でないですし…

また、友人系とは別に、乃梨の職場話を見ていると、母親の仕事のしずらさを改めて感じました。
あんなに周囲が露骨な態度しても子供にあたったり、母親としての務めができるのは凄いと思う。
(壱花に言えなかったという気持ちも分かるので個人的に彼女を責めたくない)

あと、壱花が乃梨の事情を聞いた際、責めずに詳細を聞いたシーンで涙腺がめちゃくちゃ緩みました。
衝突はあったけど、お互いを想う気持ちはしっかりあったんだな的な意味で。
(友人は無理に作らなくて良い系漫画で、友情の尊さ感じられたレア回!!!!



 

単行本限定のコンテンツについて

1巻限定の特典として、

  • 臨床心理士の清水あやこ先生による各エピソードの解説
    (相談相手の友人が、どういう心理状態だったのかなど、漫画の内容をより知れる内容)
  • 『SNS依存女子を切る方法』に登場した、相談者の元友人でありTwitter依存女子・加奈子視点の話

が収録されています。
(更に、カバー裏には、有馬と飼い犬・鉄分の若き頃の癒しイラストがあり)

SNS依存女子を切る方法の裏話は、加奈子視点だと、柚季もそこそこダメなことが分かる内容でした。
(といっても、柚季はネットに疎い故の内容だし、加奈子のSNS基準の拗らせ&有名になりたい故の暴走が示唆された描写も相当アレなので同情しずらいオチ

嫉妬からのミュートがリアルでじわじわな恐怖を感じました。

いつか、加奈子視点のSNSを軸にしたエピソード(加奈子がSNSに嵌ったきっかけは、勤め先が原因なので)があるのかも?という期待も個人的に感じております。

有馬はカバーイラスト的に、過去、友人関係に悩んだ(改善しようとあがいたけど、できなかった)可能性が考えられるイラストで、興味深かったです。

【まとめ】学生時代に出会っていたかった…

友人は無理に作る必要もないし、苦しんで続ける意味も無い。

暗黒時代のあった中学時代(友人が少ないのは恥だと思いこんでた)と、陽の者になりたくて無理をしてた大学時代のあった私としては「学生時代にこの本と出会っておきたかった」の一言に尽きる本でした。

友人関係が変わったかは分からないけど「友達が少なくても良いんだ」と心の内に留めておけるだけで随分違ったと思うので。

そして、かなり長い付き合いのあった友人がSNS依存症になり、攻撃的かつ香ばしい人間にクラスチェンジしてしまったのを機に距離を置いてフェードアウトしたことがあるのですが、やって良かったんだな(後悔はしてないけど、たまに長年の友人を切った罪悪感があった)と改めて感じた次第です。
そのため、『SNS依存女子を切る方法』が1巻内では最も刺さりました。

因みに、過去の暗黒時代を思い出したのは『群れたがり女子を切る方法』だったり…。
あの無自覚な悪魔的存在(刺激したらイジメのターゲットにされる)はガチで怖い。

あと、友人関係を解消するテーマな中で、唯一・友情関係を改善できた『自分が持っていないものを持っている友達』が異色であり、好きな話でした。
これは相談者と相手の性根と互いを大事にしていた気持ちがあった故のオチだったのかなと。

有馬先生は相談者に対して解決法を的確に話し、救っている印象があるものの、相手をサンプルとして見てる描写もあり、彼に関する掘り下げエピソードもいつかあるのかと楽しみです。

飼い犬の鉄分に対しては、有馬先生なりの「こだわり・大事だから故のネーミング→名前が鉄分」という描写があったので、純粋に可愛がってる説を推したい。

因みに1巻収録分では女性の相談者オンリーでしたが、2巻に収録される話には、男性の相談者も登場します。
いじり・いじめの境界線を主題にした内容でかなり面白く、タメになったので、友人が複数いるけど何か疲れる…な方にぜひ読んでいただきたいです。

更に、相談者に問題があるケースが連載分にあるなど、今後も色々な友情デトックスエピソードが見れる予感……!

異性の友情とかについても、いつか取り上げられそうですね。

今回、ご紹介した本はこちら

※紙媒体・電子書籍どちらでも購入可能です※

内容をもっと知りたい方は…

連載元のくらげバンチでは、期間限定で最新話、1巻のトップバッターエピソード『マウンティング女子を切る方法』が読むことができます。

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