コミックレビュー

毒親とのバトル開始!「凪のお暇6巻」は相変わらずハードな再生漫画だった

空気を読みすぎて空気の吸い方を忘れてしまった女性・凪の奮闘記ストーリー「凪のお暇」
待望の6巻が2019年9月13日に発行されました。

5巻では凪と似たタイプの市川という女性が登場し、慎二と良い仲に?
新たな職場で自身の隠れた欠点に気づいたり苦手な客との攻防戦をと通じて成長した凪。
運命の歯車がまさかな方向に動いたせいで、急な再会をした慎二と凪。
凪へ抱く謎の気持ち(恋心)の正体が分からずに悩むゴン。

…と、衝撃だらけの1冊となっていました。

今回の6巻では
「凪、本格的な就職活動を試みる」
「慎二と市川がとうとう一線を超える!?」
「ゴン、凪への気持ちが分からずに元カノ・エリィに相談してヒントを得る?」

に加え、前々からオーラを出していた凪の母親・夕(凪が極端に空気を読む性格になった原因)の掘り下げが収録されています。
彼女は何を思って凪に異常な価値観の押しつけや教育をしたのか?
真実の背景には『閉鎖空間である田舎だからこそ』な地獄があるようで。

そして、凪は親戚の結婚式のために遠征してきた母ととうとう直接対面!
泥沼に近い闇を抱える母娘はどんな会話を繰り広げるのか!?

以下では私が個人的に面白かった部分をピックアップしております。
普通にネタバレをしているので未読の方はご注意くださいませ。

また、ネタバレは勘弁と戻る方へ一言
「凪の母親関連の話のラスト付近はまじホラーなので暗い場所で読むのは避けた方が良いです!!」



凪のお暇6巻感想~閉鎖空間のしがらみ、親という鎖が重すぎる件~

慎二と市川の進展、それでも凪に未練がある慎二の心情は?

5巻の時から互いに惹かれあっていた慎二と市川。

なんと、6巻ではしれっと二人がホテルインして一夜を共にしていた描写が……!!
慎二、手を出すのはやっ!!!!!!
例のコマを見た方はかなり驚いたかと思います。

また、市川と距離を縮めたことで気持ちが変わったのか、慎二は今まで執着していた凪の連絡先を消していましたが、頭のどこかには凪の存在があり、結局はどこかにまだ気持ちがあるようにも…
凪が夕(凪の母親)と会う際にも彼氏役として登場しますが、慎二の心中は一体どうなっているのか!?

慎二の新しいパートナー候補である市川は、おちゃめさ・あざとさが、5巻の時よりも濃く感じるように描かれており、こういう風な言動がコミュニティークラッシャーに繋がるのでは…という気持ちが過ってしまったり。
(市川に色々される男性側はクリティカルで刺さりますが、読者や女性側からしたら決して嫌いにはならないけど、ちょっとイラっとするやつ)

もし、慎二と市川がこのまま本格的に交際をするとしたら、社内で市川が一度はフルボッコにされると予想しているのですが、慎二は凪の時と同じことを繰り返さないのかも気になるところです。
凪の時は最悪なタイミングと接し方で彼女にトドメをさし、今に至っていますからね。

 

田舎という地獄とそこに囚われる女の執念

中盤では、凪の母親・夕と、夕視点による凪の故郷(北海道)に関する掘り下げが描かれています。
今まで凪の回想でたまに出てくる程度の存在たちでしたが、姿を現すと、寒気を催す地獄なことが判明。

凪がかつて暮らしており、今は夕が母(凪の祖母)と暮らす地域はとにかく閉鎖的な田舎でした。
娯楽は『女を使用人扱いにして酒を楽しむ飲み会』『不倫』『人の悪口』『マウント取り』

その場に当人がいなければ周囲は我先にと対象の悪口を言ってはストレスを解消し、互いの伴侶を内緒で奪い合っては見下し合う、稚拙な人たちによって作られる空間

また、凪の祖母もその習慣に染まり切っており、自分が中心にならないと癇癪を起しては夕に負担をかけている様子。

そんな故郷の異様さを分かっていながらも『良好な位置(裏では馬鹿にされているのを自覚済み)』を維持する夕は、凪に対して

「あなたは、こんなところにいてはだめ」
「逃げてね遠くへ」

「そして、お母さんをこの地獄からちゃんと連れだしてね」

と、恐ろしい笑みを浮かべながら、凪を想う日々を送っていました。
(凪が良い所に就職して安定した生活をした際に寄生する気満々)

また、夕は過去に同級生たちと人生ゲームをやった際、子供のコマを「いらない」と吐き、捨てた過去が。
もしかすると、田舎のしがらみ・親からの強制で凪父と結婚し子供(凪)を産んだのかもしれません。
(凪父は出て行って行方不明?らしいですが、田舎から出て行ったのか誰かと不貞をし続けているのかは不明のまま)



ゴン、引き続き停滞中…

凪との歪んだ恋人関係を解消後、凪へ特別な気持ちを生じているけれど、気持ちの正体(凪への恋?)が分からず苦悩していたゴン。
6巻でも引き続き、彼は自身の気持ちの整理がつけられず、元カノであるエリィに相談するシーンが描かれていました。

今までゴンは本当に恋愛感情ありきで他人と付き合ったことない(そもそも愛情って何?状態かも)のが分かる、ちょっと怖い部分でもありました。
緩い目で見ると可愛いんですが、よくよく見ると地雷なのがゴンイズム!!!!

色々動きがあったと慎二と比べてゴンはおとなし目な印象でしたが、母親との確執で気を落とす凪をフォローするなど、従来のゴンパワーは健在。
彼が恋に気づいて本始動した際には作品の流れが一気に変わりそうです。

また、エリィがそんなゴンに対して複雑な想いを馳せながらもツンデレアドバイスをする姿が可愛く見えてしまったり。
エリィは、ゴンと付き合った同士の凪に当たることなく、夕と対峙する凪の服装についてフォローする描写もあり、彼女の気の良さが伺えました。

描きおろしページでは、ゴン&エリィのエピソードが拝め、笑えつつもゴンの某描写に不穏が垣間見えました。
あの寒気は今後のフラグになりそうと予想。

 

凪、母と対決!? 凪のためにと奮闘する周囲に涙…

母親・夕の機嫌を損ねれば、北海道へ強制送還待った無しな凪。

しかも、母からは「彼氏(夕は凪から彼氏がいると聞かされている&今はフリーなのを知らない)も紹介してくれ」と言われる始末。

ただでさえ、一緒に居るだけで心が枯れる相手と時間を過ごすのに…と絶望する凪に手を差し伸べ、夕との戦いを応援する人物たちの描写は7巻でもっとも泣けるシーンなのではないでしょうか?

スナックではママとロン&ジェーンだけでなく、5巻でちょっと面倒な客として登場した桃園が凪のために『母との決戦対策』を練ってくれる描写が。
(更に、桃園は凪の彼氏役をやってくれる上に、細かいシュミレートにも付き合ってくれます)

また、服選びにゴンが付き添い、ゴンの元カノであるエリィが『本当に自分に合う服の選び方』を伝授し、うららとみすず(うらら母・今回で名前が判明しました)、吉永さん(映画好きのおばあちゃん)も、凪を応援してくれ……

皆が凪が強制送還されぬよう付き合ってくれているのは、今まで頑張った成果であり、紡いだ絆があったからこそ。
その答えをゴンがさり気なく凪に伝える部分も非常に胸が熱くて涙が…。

凪自身が皆と離れたくないと強く願うコマは読者側も同じように願わずにはいられない場面となっていました。

個人的に、母である立場のみすずが凪の「母親に嘘をつくことへの罪悪感」に対する返答が名シーンと推したい。
もし、凪の母がみすずだったら…と思い泣きました。

凪が想う「離れたくない人たち」にカウントされていない慎二

式場のロビーで母を待つ凪は段々と緊張で精神を強張らせますが
「みんな顔を思い出して堪える、私はみんなと別れたくない、ここにいたい」と
アパートの仲間たち、スナックのママとスタッフコンビ(ロン&ジェーン)、桃園、坂本、ゴン……と思い出す中、慎二が一切描かれていなかったのが、とても印象的でした。
(ゴンは、凪の衣装探しに協力したり、周囲が凪母対策をしてくれるのは「みんな、凪ちゃんのことが好きだからだよ」と伝え、彼女を元気付けているので慎二より遥かに貢献している)

そもそも凪母との対決を練る際に慎二は一切関わっていないので仕方ないのかなと思いましたが、とあるコマでは『凪を騙す気満々だった就活エージェントのおばちゃん>慎二』になっていたのが地味に笑えつつもダメ―ジを食らった気分に。

なんて残酷なコマなんだ……!!!

一応、慎二は尊敬に対する部分がある人だったかも?と5巻でありましたが、やっぱり凪の中で優先度はワンランク劣っている感じも?
(慎二本人がこの現実を知ったらあらゆる意味で泣きそう…)

それを踏まえて7巻以降の展開が楽しみなところです。

 

【感想】閉鎖空間の怖さを10年分、味わえました

夕と凪の故郷話は下手なホラー物よりも格段にゾクゾクしました。

閉鎖空間だからこその『しがらみ』ってこんなにも人を狂わせてしまうんだと。
多分、夕は逃げることも考えたけど母親関連含め、無理だと悟ったのかもですね…で、凪を地獄から助けてくれる道具にしたと。
それで凪がどうなったかはお察し。

あと、凪が夕とサシで話す際にどんどん廃人のようになるのが読んでて辛かった…
これが幼少期はずっと続いてたんだろうな。

慎二の凪への気持ちは混沌化してきて、当人も分かって無い部分がありそうです。
また、間接的に凪母の件を聞いた際には「話すべきことを俺たちはしていなかった」と感傷に浸り速攻で市川とイチャつく姿も…ワケガワカラナイヨ。
更に、ラストではまさかの桃園の代わりに慎二が彼氏役で来るという衝撃展開でもう、雑誌で追いたくなる気持ちに。

慎二なら……慎二ならあの夕を攻略してくれる……
けど、気に入られたらそれはそれで凪の壁になる予感も。

また、6巻では桃園ができる男としてめっちゃ活躍してましたね!
彼は彼なりに凪のことを大切に想っていたようで……
なぜ、凪の彼氏役で来なかったのかは7巻のお楽しみということで。

そういえば、坂本さんは前半で再就職が決定した上、嬉しいお知らせを凪と読者が知ることになりましたが、あの流れだともう坂本さんの出番は終わりになるのかなと心配になっていたり。
うららちゃんとは別枠で凪の貴重なフレンズな印象がある故、また再登場して欲しい限りです。

ご購入はこちら

※紙媒体・電子書籍どちらからも購入できます※

 

6巻の続きをすぐに読みたい方は、凪のお暇が連載している『エレガンスイブ 2019年10月号』もオススメです。
10月号には6巻ラストの続きが掲載されています。
(amazonでは、少しだけ続きが試し読みできます)

[n_news]